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来日したプロ販売員協会のトップが語る 令和のあるべき接客

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販売員の地位と専門スキルの向上を目的に、2016年に設立された日本プロフェッショナル販売員協会(JAPAN SALES PROFESSIONALS ASSOCIATION以下、JASPA)。来日したエマニュエル・プラット(Emmanuel Prat)代表理事は、 LVMHグループで社長などを歴任し日本在住歴も長く日本語も堪能で日本の販売の特性も深く理解する。日本の協会スタッフと密にコミュニケーションしながら運営を行うエマニュエル代表理事に、2年間の成果と19年の販売員を取り巻く状況、さらには展望について聞いた。

JASPA設立から2年、日本の販売員を取り巻く環境に変化はあった?

大きく変わった。デジタル技術によってマーケットの変化スピードは加速し、オフラインとオンラインの境はなくなりつつある。これに伴って若い世代の消費動向にも変化があった。彼らはウェブやSNSを通じて多くの情報を持つ。だからこそ唯一のタッチポイントである実店舗、そして販売員の重要性が高まっている。

例えば、あるブランドがシャルル・ド・ゴール空港の到着ロビーにデジタルサイネージを出しているとする。来訪者はそこにスマホをかざし、店舗の場所や新作アイテムの情報を得る。スマホでは免税の手続きやECサイトへのアクセス、来店予約もできるが、彼らが行きつく先が実店舗だ。来店までに多くの情報に触れるため、接客にも高いレベルが求められる。

あらためてJASPAの役割について聞きたい。

販売の仕事は本来やりがいのあるものだし、高いコミュニケーション能力やファッションセンス、知識や教養が求められる。しかし現実的には、ネガティブなイメージがあることも否定できない。JASPAはこれを是正したい。

海外で買い物をすると、日本人販売員のレベルの高さに気付かされる。

おっしゃる通りだ。日本の接客レベルは世界トップクラス。それを現場の販売員に伝え、自信としてもらうのもJASPAの役目だ。店頭での経験は、営業やMD、マネジメントにも役立つ。なぜならファッションの最前線が店頭だからだ。全てがそこにある。ラグジュアリーブランドのゼネラルマネジャーには販売員経験のある人が増えた。“売ることをよく知る人”だからビジネスも拡大する。一方で、販売がやりたくないという人はマネジメントでも失敗すると思う。人が好きで、ファションが好きなことが大事だ。

しかし若い販売員と話をすると、依然不満が多い。

もちろん“パーフェクト”とは言えないが、2年前に比べて多くの人の労働条件が改善された。そしてそんな彼らが働く店は、一歩入ればすぐに分かる。活気が違うからだ。

販売員のなり手不足を解消するためにはどうすべきか?

現場が変わってきたことを伝えることだ。デジタル化によって、かつて“3K”と呼ばれた販売職はスマートになった。在庫管理などオペレーションの大部分をデジタル管理することで、販売員は接客に集中できる。実は10年前まで「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」ではカタログを1000円で販売していた。今ではウェブで自由に閲覧できる。カタログの更新など、ブランド側の管理もスマート化されている。

JASPAの利用者像は?

学生(新卒)だけでなく、一般(中途)にも対応している。中には、子育てを終えた主婦がクリスマスシーズンだけ利用する、という例もある。今後はむしろ、そういった新規の層を掘り起こしていきたい。今、日本では宝飾や時計など高額商品が好調だが、それらを販売するためにはスペシャリストの存在が必要となる。

ずばり2019年の販売員に求められるスキルとは?

“人間力”だ。これに尽きるし、そこで差がつく。つまるところ、ハート・トゥ・ハートということだ。

では、人間力を高めるためにJASPAが行っていることとは?

接客に必要な技術を向上させるスキル系プログラムのほかに、編集者でファッション・クリエイティブ・ディレクターの軍地彩弓さんや元「ニューズウィーク日本版」編集主幹でフリージャーナリストの藤田正美さんによるセミナー、キュレーターによるガイダンス付きのバレエ、歌舞伎、アートの鑑賞などを行う教養系プログラムを用意している。商品を売ることだけが販売員の仕事ではない。顧客の高い知識や教養レベルに応える必要がある。

プラット代表理事は、日本とフランスでラグジュアリーの世界を見てきた。販売員に違いはあるか?

日本は影響力が強く、ファッション業界の人間は皆、日本を見ている。ショップコンセプトや店舗づくりもさることながら、やはり接客だ。日本では、雨が降ると店頭にビニール袋を用意するのが当たり前だが、フランスでは最近ようやくこれを導入し始めた。おもてなしの精神は、やはり日本の誇りだと思う。

プラット代表理事の人生で最も印象に残っている販売員とは?また優れた販売員の共通点とは?

05年に「カルティエ(CARTIER)」南青山店がオープンした際に立ち寄ったのだが、ある男性販売員が私の着けていた「ゼニス(ZENITH)」の時計を見て、「いい時計をお持ちで」と声を掛けてきてくれた。彼の時計の知識からコミュニケーションが生まれ、その後もあいさつする仲になった。結局、そのときは何も買わなかったのだが(笑)、「カルティエ」の商品をごり押しするわけでもないスタイルにも引かれた。彼は今、競合ブランドの大規模店舗の店長を務めている。

「ロエベ クラフト プライズ2019」のファイナリスト発表 日本人は過去最多の10人が選出

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ロエベ財団(LOEWE FOUNDATION)が主催する「ロエベ クラフト プライズ 2019(LOEWE FOUNDATION CRAFT PRIZE 2019以下、ロエベ クラフト プライズ)」のファイナリスト29人が発表された。ファイナリストの各作品は6月26日~7月22日、東京赤坂の草月会館にあるイサム・ノグチが手掛けた石庭「天国」に展示される。

 ファイナリスト29人のうち、日本人は過去最多の10人が選ばれた。選ばれたのは石塚源太、井尾鉱一、西川雅典、中田真裕、藤掛幸智、道川省三、橋本知成、平井明子、森順子、高樋一人。ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)「ロエベ」クリエイティブ・ディレクターや前年度優勝者のイギリス人陶芸家ジェニファー・リー(Jennifer Lee)を含むデザイン界で活躍する11人が審査する。6月25日に優勝者が石庭「天国」で発表され、優勝者には5万ユーロ(約625万円)が授与される。

 3回目を迎える「ロエベ クラフト プライズ」は、アンダーソン=クリエイティブ・ディレクターの発案で2016年にスタート。クラフトの重要性に焦点を当て、未来のスタンダードを創出する才能やヴィジョンを備えたアーティストを評価する目的で設立された。

 「ロエベ」は、“文化”をブランドの柱となる重要な要素だと位置付け、職人やアーティストとコラボレーションを展開してきた。また、「ロエベ クラフト プライズ」のアーティストや作品からインスピレーションを受けたコレクションも発表。19年春夏コレクションには同プライズに出品されたアイテムからインスピレーションを受け、レザーを編んだ“ハンモック”や“パズル”といったアイコンバッグやレザーと天然素材を編み込んだカゴバッグなど“編む”技術に着目したアイテムが登場した。

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